sirousagiのブログ

オーバー・ザ・レインボーを目指して

点描 図書館にて

木枯らしが吹き荒ぶ冬の午後

 

日当たりの良い南側の席は、居眠り人たちの寝息が高く低くかしましい。

「静かに本を読むところなのに、いびきがうるさくて、集中できません。注意して下さい」

図書館員はその要請がきて初めて動き出す。

とうに気づいていたろうに、積極的には動かない。

寝てる人に静かに声を掛ける。

「具合でもお悪いのですか?」


と、決して高飛車には言わない。


「ママ〜どこ〜」

子供が口に両手をメガホンにして叫ぶ

奥の書棚から

「ここよ〜。ママは本を探してるから、そっちで絵本みててね。静かにね、わかったぁ」

大きな声で叫び返す。


えっ、ここは街中の本屋ですか?


乳飲み子を乳母車に乗せ、かなり気合の入ったお洒落をした母親が現れた。

乳母車の乳飲み子は図書館の中でいきなり泣きはじめた。

大きい泣き声は彼らにとっての生きる為の手段だ。

母親はお構い無く

泣き声とヒールの音も高く

図書館の中を練り歩く。

ちょっと抱いてあやしたり、外連れ出すという心遣いも無い。

館内に泣き声が響き渡る。

迷惑そうな視線が、あちこちから飛んで行くが、一向に感じないようだ。

ひとりの男性が

「静かにさせなよ」と声を掛けた。

母親はすかさず

「あなたのお子さんは泣いたことないのですか?」

と大きな声で反論する。

切り返す刀は図書館への批判に取って返す。

「私が勉強するのに、子供をみるシステムがあれば問題ないのです!」

注意した男性は首を傾げながら退散する。

誰も

みんなの気持ちを代弁してくれた男性に「ありがとう」の言葉さえかけない


そんなに焦らなくても子供はすぐに大きくなり、

母親ひとりの時間はウンザリするほど出来る。

焦らずに爪を研いでおこう!


両手にずっしりと袋を下げた親子が現れた

30冊はあろうかと思われる

体型も顔もよく似た親子だ

ただ男の子は母親を優にこす体格だ

しかし本を持っているのは母親だけ

母親は一冊づつ取り出しては息子に確認する

息子はむすっと頷く

返し終わると

息子は書棚に行ってしまった


残された母親は椅子に腰掛けてじっと待つ

本を読むわけでなく息子を心配そうに見ている

しばらくすると

母親は息子の傍らに行き

息子が渡す本を両手で大事そうに受け取る

貸出のカウンターは母親が運ぶ本の山になる


帰る時も多量の本を持って帰るのは母親だけ

しかし

息子を見上げる母親は誇らしげだ